スタッフブログ【さびうらびより】BigWest一覧
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第395回 ウツボの赤ちゃん展示中
現在、長い生き物水槽で「ウツボ亜科の一種の仔魚」を展示しています!!
ウツボの仲間を含むウナギ目魚類の仔魚は、体は透明で柳の葉のような形態をしており、海中を浮遊しながら生活しています。
専門的にはこの段階の仔魚を、葉形仔魚やレプトケパルス幼生などと呼ばれています(魚類屋の間では、「レプト」と略称されています)。
ちなみにレプトケパルスとは、ラテン語で「小さな頭」という意味であり、その名のとおり体に対して頭が著しく小さいのが特徴です。
またウナギ目の仔魚は体が極めて大きくなるのも特徴で、中には全長40cm以上にもなる種がいます。
近年では、水産有用種であるニホンウナギがフィリピンのマリアナ沖で産卵し、レプトケパルス幼生が黒潮に乗って、
日本まで浮遊してくる事が明らかになりました。
しかし、ウナギと同じくレプトケパルス幼生を経るウツボやウミヘビの仲間の初期生活史については、まだまだ謎だらけです。
展示中のレプトケパルス幼生は形態からウツボ亜科であることは分かりましたが、詳細な種は不明です。
飼育を開始して9日目ですが、体に少しずつ変化が見られます。
採集直後と比較すると顔つきや体の体高に変化が見られるのがわかります。![]()
果たして何ウツボになるのか…成長が楽しみです!!
by Big West
第389回 月光に輝く「ゲッコウスズメダイ」
昨日珍しい魚を寄贈いただきました!!!!
その名もゲッコウスズメダイ!!!!!
多くのスズメダイ科魚類は、沿岸の浅い海域に生息していますが、
なんとこのゲッコウスズメダイは水深120mから採集されました。
深海魚(水深200m以深に生息する魚)とまではいきませんが、深場に生息する珍しいスズメダイです。
このような深場の魚は、水圧の関係で状態よく活かしたまま採集するのが非常に困難です。
今回、採集し寄贈いただいた串本町在住のOさんに感謝いたします。
ゲッコウスズメダイについて少しご紹介いたします。
本種は従来、同じく深場に生息するトウカイスズメダイ(体側に1本の褐色縦帯がある)の一種とされていましたが、
2019年に新種として記載された比較的新しい種です。
現在のところ、日本国内では相模湾から琉球列島にかけての黒潮流域で確認されています。
和名のゲッコウは、鱗の輝きが「月光」を思わせることからその名が付けられました。
上述のとおり、活かして採集するのが困難なため水族館での展示例は少なく、
沖縄美ら海水族館、高知県立足摺海洋館に次いで国内3館目?の展示になりそうです。
ゲッコウスズメダイは、本日4月26日からトピックス水槽で展示を開始しています。
生きた姿は中々お目にかかれない珍しい魚なので、お越しの際はじっくり観察してみてください。
※長期飼育は難しいと考えられるため、予告なく展示を終了する場合がございます。予めご了承ください。![]()
by Big West
第383回 水族館に持ち込まれた珍魚
水族館で勤務をしていると有り難いことに、地元の漁師さんや地元在住の魚好き小学生から生き物を寄贈していただく機会があります。
寄贈された生き物の中には、普段採集ばかりしている私でも見たことがない生き物がたくさんいます。
今回は寄贈された生き物の中で、個人的に珍しいと思った魚を紹介していきたいと思います。

①ヤリガレイ
本種はダルマガレイ科の仲間です。海で漂っていたところを地元の漁師さんに採集されました。
この個体は浮遊期の仔魚で、よく見ると背鰭に伸長鰭条、腹部には外腸(腸が体の外に出ている)が確認できます。
これは浮遊適応と考えられており、水への抵抗が大きくなり漂いながら生活するには適しているみたいです。

②ヨコエソ
本種はワニトカゲギス目ヨコエソ科の仲間です。THE深海魚のような黒い見た目をしています。
生息水深は100~500mの深海性の魚です。
この個体は深海魚釣りで釣られた個体で、私が港に取りに行った時には生きていたのですが、
水族館に戻る途中で死んでしまいました。
体には白く光る丸いものがありますが、これは全て発光器です。
光の届かない深海では発光器を用いて餌となる生き物をおびき寄せるなどと考えられていますが、
真相は未だに謎に包まれています。

③ギンカガミ
ヤリガレイを寄贈していただいた漁師さんからのいただき物です。
体が逆三角形をしているのが特徴です。
本種はギンカガミ科ギンカガミ属に分類されており、
このグループは世界で1科1属1種(本種のみ)の珍しい魚です。
採集後、船で輸送中に死んでしまったようです。
いつか展示したい魚の一つでもあります。


④ウミヘビ科の一種?
この個体は、地元在住の魚好き小学生とそのご家族が採集し寄贈していただきました。
本個体は葉形仔魚期、いわゆるレプトケパルスと呼ばれるウナギ目の仔魚です。
じっくりと観察はできていませんが、形態的特徴がウミヘビ科のものと一致したため、
「ウミヘビ科の一種」として紹介します。
ウナギ目のレプトケパルスは同定(種を調べる)が非常に難しいです。
私は普段仔稚魚を見る機会が多いですが、このグループは属(科の下)まで調べるのにも一苦労です(私には不可能)。
貴重な種類の可能性もあるので、時間があるときにじっくりと観察したいと思います。
寄贈していただいた珍しい魚の写真はまだまだ沢山あるのですが、
書き出すと終わりが見えないので、今回はこのあたりで終わりたいと思います。
寄贈いただいた皆様には感謝するとともに、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
by Big west
第377回 紫外線で蛍光する魚
先日興味深いニュースを見ました。
ニュースの内容は、西オーストラリア博物館の学芸員であるケニー・トラブイヨン博士が、
博物館で所蔵している哺乳類の剥製に紫外線ライトを当て、蛍光するかを調べたという研究についてです。
ケニー博士は過去にアメリカの研究者が発見した、カモノハシ(オーストラリア固有の哺乳類)が紫外線で蛍光するという研究に興味を持ち、他の哺乳類で調べてみたとのこと。
研究の結果、多くの哺乳類で蛍光することが分かったそうです。
蛍光することで、同種間での識別などに役立っている可能性があると考えられていますが、詳細はまだ分からないとのこと。
生物の蛍光についてはこれまでにいくつかの報告がありますが、実はその多くが海洋生物です。
そんなこんなで、閉館後の水族館で蛍光する魚がいるのかを調べてみることにしました。
紫外線ライトはネットショッピングで900円で購入した安価なものです。
結果‥‥
蛍光する魚はいましたが、体の一部分(例えば棘など)しか光らないため写真に納めるのが難しく、
ほとんど写真は撮れていません‥‥
ちなみに当館で蛍光する魚は、イトフエフキ、ハナミノカサゴ、キリンミノ、オニカサゴ、サツマカサゴ、ヒダウツボなど。
詳しく調べればもう少しいるかと思います。
で!!実は!!!!
今回蛍光を確認した魚の中で、突出して蛍光する種がいました!!!!
この種だけ、きれいに写真が撮れたのでご紹介させてください!
ヒダウツボ!!!!!!!!!!!!!


かなり蛍光しています!!!!すごい!!!!!!
通常時は茶色っぽい少し地味な体色をしていますが、まさかこんな裏の顔があったとは。。。。
にしても蛍光しすぎです!!!
ウナギ目魚類の生物蛍光について少し調べてみると、
2015年にアメリカの研究者がイワアナゴとイワアナゴ属の一種が蛍光するという報告をしていました。
他にも、新江ノ島水族館のブログ内でアミキカイウツボが蛍光する様子が紹介されていました。
前者は繁殖期にお互いを見つける為、後者は紫外線から体を守る為ではないかとのこと。
いずれにしてもヒダウツボが蛍光する理由は分からないが、
繁殖や紫外線から体を守る為に利用されていると考えると、大変興味深いです。
今後も、閉館後の水族館で紫外線ライト片手に魚類の蛍光について探っていきたいとおもいます。
by BigWest
第371回 うなぎの話
暑い日が続き、蝉の鳴き声で目覚める朝。
待ちに待った夏の到来です!!
そして夏と言えば、ウナギ!そう!土用の丑の日です。
今年は、7月30日が土用の丑の日です(昨日)。
私はこの時期になると無性にウナギが食べたくなり、毎年スーパーで値引きされたウナギを買っています。
購入する時に少し気になるのが産地です。毎年、国産を買うか中国産を買うかで悩みます。
ちなみに国産はニホンウナギ、中国産はおそらくヨーロッパウナギです。
値段は圧倒的に中国産が安いので、結局中国産のウナギを毎年食べています。
今年もスーパーで国産か中国産を買うか悩むと思いますが、奮発して国産を食べてみようかな‥
そしてウナギ繋がりで先日、潮岬のとある漁港で下記写真のウナギを採集しました。



漁港を覗いていると、まだら模様の細長い魚が一瞬見えたので、
「もしや!!」と思いライトを照らすと直ぐに穴の中へ消えていきました。
その後、1時間ほど待ってようやく顔をだしてくれました。
顔を見て、予想通り「オオウナギ」である事を確認。
和歌山県に分布しているのは知っていましたが、まさか身近な漁港にいたとは‥‥
これは採集しなければと決意し、1時間かけて採集しました。
オオウナギは、国内では南日本に広く分布しており、特に琉球列島に多いみたいです。
名前の通り、全長が2m以上になる大きなウナギです。
写真は3年前に八重山諸島で採集した1m以上の個体です。
人と比較すると、その大きさが分かります。

和歌山県では、河川の空隙等の減少により、本種が生息できる環境が少なくなっており、
県のRDBでは準絶滅危惧種に指定されています。
また近年、大型個体の記録も少なくなってきているようです。
今回採集した個体は30cm程度ですが、いつかオオウナギの名に相応しい大きさまで育って欲しいです。
by Big west



