スタッフブログ【さびうらびより】スタッフ:BigWest一覧
串本の様子や様々な串本の生き物たちを、
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第402回 君はいったい誰センボン?
ハリセンボンの仲間は日本周辺海域から7種類が記録されています。
そのうち串本周辺海域からは、5種類が記録されています。
8月某日、当館に実習で訪れていた実習生が1個体のハリセンボン幼魚を漁港で採集してきてくれました。
当初、担当飼育員は普通のハリセンボンだと思い水槽で飼育をしていました。
そして先日ふと水槽内を覗き込むと、体の色彩やその模様が普段みているハリセンボンとは違うことに気付きました。
もしやネズミフグでは.……???
ハリセンボンの仲間はハリセンボンを除き、稚魚や幼魚の記録はとても少ないです。
串本にもネズミフグの成魚は普通に生息していますが、これまで本種の幼魚はみたことがありません。
今後、立派なネズミフグに成長していくのが楽しみです!!
by Big West
第401回 ニセゴイシウツボの産卵前行動
当館で観察されたニセゴイシウツボGymnothorax isingteenaの産卵前行動に関する論文が出版されました!!
ニセゴイシウツボはウツボ科魚類の中では大型種で、多くの水族館で飼育展示されています。
その一方で、これまで生態的な知見はほとんど得られておらず、特に産卵については謎に包まれていました。
ウツボ類の産卵については近年少しずつ明らかになってきており、例えばウツボG. kidakoではペアを形成することや、オスがメスの顎を咥えて急浮上して放精、放卵する行動が観察されています(Oomori et al.,2024)
当館では数年前からニセゴイシウツボの産卵行動と思われる行動が確認されており、2023年にそれらの撮影を試みることにしました。
その結果、これまで確認されていなかった本種のペアの形成や、オスがメスの顎を咥えて水面へ浮上する行動などの撮影に成功しました。
今回の観察では受精には至らなかったものの、上記のとおり本種の生態に関する新たな知見を得ることができました。
今後は受精の成功を祈りつつ、さらに詳細な観察を行っていきたいです。
【論文詳細】
タイトル:水槽内で観察されたニセゴイシウツボの産卵前行動
著者:大西 遼・佐久間夢実(串本海中公園センター)
論文は鹿児島県自然環境保全協会が発行する「Nature of Kagoshima」のHP内で公開されています。
下記URLより論文のPDFがダウンロードできます。
https://journal.kagoshima-nature.org/051-022/
写真はペアを形成しているニセゴイシウツボです(左:オス、右:メス)。
by big west
第395回 ウツボの赤ちゃん展示中
現在、長い生き物水槽で「ウツボ亜科の一種の仔魚」を展示しています!!
ウツボの仲間を含むウナギ目魚類の仔魚は、体は透明で柳の葉のような形態をしており、海中を浮遊しながら生活しています。
専門的にはこの段階の仔魚を、葉形仔魚やレプトケパルス幼生などと呼ばれています(魚類屋の間では、「レプト」と略称されています)。
ちなみにレプトケパルスとは、ラテン語で「小さな頭」という意味であり、その名のとおり体に対して頭が著しく小さいのが特徴です。
またウナギ目の仔魚は体が極めて大きくなるのも特徴で、中には全長40cm以上にもなる種がいます。
近年では、水産有用種であるニホンウナギがフィリピンのマリアナ沖で産卵し、レプトケパルス幼生が黒潮に乗って、
日本まで浮遊してくる事が明らかになりました。
しかし、ウナギと同じくレプトケパルス幼生を経るウツボやウミヘビの仲間の初期生活史については、まだまだ謎だらけです。
展示中のレプトケパルス幼生は形態からウツボ亜科であることは分かりましたが、詳細な種は不明です。
飼育を開始して9日目ですが、体に少しずつ変化が見られます。
採集直後と比較すると顔つきや体の体高に変化が見られるのがわかります。
果たして何ウツボになるのか…成長が楽しみです!!
by Big West
第389回 月光に輝く「ゲッコウスズメダイ」
昨日珍しい魚を寄贈いただきました!!!!
その名もゲッコウスズメダイ!!!!!
多くのスズメダイ科魚類は、沿岸の浅い海域に生息していますが、
なんとこのゲッコウスズメダイは水深120mから採集されました。
深海魚(水深200m以深に生息する魚)とまではいきませんが、深場に生息する珍しいスズメダイです。
このような深場の魚は、水圧の関係で状態よく活かしたまま採集するのが非常に困難です。
今回、採集し寄贈いただいた串本町在住のOさんに感謝いたします。
ゲッコウスズメダイについて少しご紹介いたします。
本種は従来、同じく深場に生息するトウカイスズメダイ(体側に1本の褐色縦帯がある)の一種とされていましたが、
2019年に新種として記載された比較的新しい種です。
現在のところ、日本国内では相模湾から琉球列島にかけての黒潮流域で確認されています。
和名のゲッコウは、鱗の輝きが「月光」を思わせることからその名が付けられました。
上述のとおり、活かして採集するのが困難なため水族館での展示例は少なく、
沖縄美ら海水族館、高知県立足摺海洋館に次いで国内3館目?の展示になりそうです。
ゲッコウスズメダイは、本日4月26日からトピックス水槽で展示を開始しています。
生きた姿は中々お目にかかれない珍しい魚なので、お越しの際はじっくり観察してみてください。
※長期飼育は難しいと考えられるため、予告なく展示を終了する場合がございます。予めご了承ください。
by Big West
第383回 水族館に持ち込まれた珍魚
水族館で勤務をしていると有り難いことに、地元の漁師さんや地元在住の魚好き小学生から生き物を寄贈していただく機会があります。
寄贈された生き物の中には、普段採集ばかりしている私でも見たことがない生き物がたくさんいます。
今回は寄贈された生き物の中で、個人的に珍しいと思った魚を紹介していきたいと思います。
①ヤリガレイ
本種はダルマガレイ科の仲間です。海で漂っていたところを地元の漁師さんに採集されました。
この個体は浮遊期の仔魚で、よく見ると背鰭に伸長鰭条、腹部には外腸(腸が体の外に出ている)が確認できます。
これは浮遊適応と考えられており、水への抵抗が大きくなり漂いながら生活するには適しているみたいです。
②ヨコエソ
本種はワニトカゲギス目ヨコエソ科の仲間です。THE深海魚のような黒い見た目をしています。
生息水深は100~500mの深海性の魚です。
この個体は深海魚釣りで釣られた個体で、私が港に取りに行った時には生きていたのですが、
水族館に戻る途中で死んでしまいました。
体には白く光る丸いものがありますが、これは全て発光器です。
光の届かない深海では発光器を用いて餌となる生き物をおびき寄せるなどと考えられていますが、
真相は未だに謎に包まれています。
③ギンカガミ
ヤリガレイを寄贈していただいた漁師さんからのいただき物です。
体が逆三角形をしているのが特徴です。
本種はギンカガミ科ギンカガミ属に分類されており、
このグループは世界で1科1属1種(本種のみ)の珍しい魚です。
採集後、船で輸送中に死んでしまったようです。
いつか展示したい魚の一つでもあります。
④ウミヘビ科の一種?
この個体は、地元在住の魚好き小学生とそのご家族が採集し寄贈していただきました。
本個体は葉形仔魚期、いわゆるレプトケパルスと呼ばれるウナギ目の仔魚です。
じっくりと観察はできていませんが、形態的特徴がウミヘビ科のものと一致したため、
「ウミヘビ科の一種」として紹介します。
ウナギ目のレプトケパルスは同定(種を調べる)が非常に難しいです。
私は普段仔稚魚を見る機会が多いですが、このグループは属(科の下)まで調べるのにも一苦労です(私には不可能)。
貴重な種類の可能性もあるので、時間があるときにじっくりと観察したいと思います。
寄贈していただいた珍しい魚の写真はまだまだ沢山あるのですが、
書き出すと終わりが見えないので、今回はこのあたりで終わりたいと思います。
寄贈いただいた皆様には感謝するとともに、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
by Big west