スタッフブログ【さびうらびより】STAFF BLOG
串本の様子や様々な串本の生き物たちを、
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第337回 石の上にも四年
遅くなりましたが、
皆様、新年明けましておめでとうございます。
今年も変わらぬご愛顧の程何卒よろしくお願いいたします。
さて、新年初潜りということで先日、ダイビングパーク前にある串本海域公園2号地区にサンゴの調査に行ってきました。
ご覧の通り、このポイントは串本でも有数のすごく美しい水中景観で、
一面に広がるクシハダミドリイシ群落(写真:卓状サンゴ)とそこに群れる小型魚類に圧倒されるような、見ていて全く飽きない魅力があります。
それからこの地点は串本のサンゴの強さといいいますか、その生命力を目に見えて感じられる地点でもあります。
というのも、ここは2017年末から2018年初頭にかけて黒潮の大蛇行と記録的な寒波に伴う異常な低水温現象により、サンゴの大量斃死(凍死や弱ったサンゴ群落での感染症の蔓延による)が起こった場所なのです。
こちらが2018年1月の同じ地点の様子です。白く白化している部分はすべて低水温によって凍死したサンゴ群落になります。
こちらは別の角度から、白くなった斃死箇所と生きている箇所の境目が分かります。
それからこちらが2018年3月の同じ地点の画像です。
真ん中の濃い緑色の部分は既に死んだサンゴが藻で覆われており、その周りの部分もかろうじて生きてはいますが、低水温が続いたことによって色が薄くなり白く白化しています。その後、この白化した群体も大部分が斃死してしまいました。
こちらも2018年3月の画像。この群落はほとんどすべて斃死して藻に覆われています。
最終的に2018年初頭の低水温によって、ここ海域公園2号地区のイシサンゴ類は2m以浅の群落を中心に50%ほどが斃死してしまったのでした。
それから4年。
この地点のサンゴ群落がどうなったかというと・・・
・・・
・・・
・・・!
幸い、その後は冬季の顕著な低水温現象は起こらず、
2020年には夏場の高水温による大規模な白化現象が発生したものの、大きな斃死被害には至らずといったわけで、たった4年でこんなにもめざましい回復が確認されました!
環境が整えばサンゴは強い生き物だと言いますが、まさにその言葉を体現してくれているようですね。
串本では江戸時代ごろからサンゴの骨格を高温で蒸し焼きにして、漆喰の原料となる消石灰(熊野灰)を作る産業があったと言われており(現在その文化は無くなっていますが)、少なくとも1931年にはクシハダミドリイシを優占種としたサンゴ群落の存在が報告されています。
また、当館前に広がる海岸は串本の方言でサンゴを意味する「錆」という言葉からサンゴの多産する海域として「錆浦」の地名が付けられていることからも、串本にはかなり昔からサンゴが分布しており、当地の文化と密接に関係してきたことがうかがえます。
少なくとも約百年以上にわたる串本のサンゴの歴史の中で、おそらくこの海域公園2号地区のサンゴ群落はこれまで何度も危機的な状況を乗り越え、今ある美しい姿を形作ってきたのだと思います。
コロナ禍に伴う大変な状況が続く中ではありますが、我々もこのサンゴ群落のように今はじっと耐え、その後のめざましい回復に備えたいものですね!
新年早々、柄にも無く真面目な事を書いてしまいましたが、
願わくばこの美しいサンゴの海を長く見続けていけることを祈っています!
メデタシメデタシ。
by ひらりん