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第396回 何でも食べ物に例える飼育員

夏本番となりました。

関東出身の私は夏というと、並木道に無数にとまっている蝉が大合唱をし、

そのうるささから、さらに暑さを感じるのが夏の恒例でした。よく通っていた、市民プールに行く最中にある桜並木には、アブラゼミが沢山とまっており、近くを通ると「ジジジ!!」と飛んでいくんですよね。蝉トラップ嫌でした。

 

田舎にくると山には沢山の蝉が鳴いていますが、町中ではあまり木がないので、日常の中で蝉の鳴き声をそこまで感じません。何となく夏休み感が薄れてどこか寂しいような・・・

 

さて、時間は少し遡り・・・

 

当館の広報にも提示されていますが、

7月3日に水族館前のサンゴが産卵していました。

この日産卵したのは、枝状のサンゴ「スギノキミドリイシ」です。

sango1.jpg

 

オレンジ色のつぶつぶがサンゴの卵、「バンドル」です。

産む直前になると卵が露出します。

サンゴは有性生殖と無性生殖によって増えることができ、有性生殖はバンドルの中の卵と精子により受精する方法で、無性生殖は折れたサンゴの破片がそのまま大きな一株となる増え方です。

 

夜の21時頃に産卵を確認しました。以下産卵の様子です。

 

 

水中にまっているつぶつぶがバンドルです。

バンドルには油膜が貼ってあるので、生み出された瞬間ゆっくりと水面へ上がっていきます。

 

そして7月29日には・・・

 

テーブル状のサンゴ「クシハダミドリイシ」が産卵しました。

カメラの前をぴょんぴょん飛び交う細長い物体は、水中ライトによって集まったゴカイの仲間です。

顔にぴちぴちと飛んできますが、いい写真を撮るために我慢・・・

この日は他にも、

sango4.jpg

「ニホンミドリイシ」

 

sango6.jpg

「ミダレカメノコキクメイシ」

 

sango7.jpg

「キクメイシ科の仲間」

 

写真にはありませんが、「エンタクミドリイシ」も産卵していました。

大規模な一斉産卵です。

 

クシハダミドリイシやニホンミドリイシは22時頃から産卵が始まりましたが、キクメイシ科サンゴは21時の時点で既に産卵が始まっていました。

 

キクメイシの仲間は、潜らずとも水面に浮いているバンドルの大きさで直ぐに分かります。

スギノキミドリイシやクシハダミドリイシは直径0.5~1mm程度の小さな粒ですが、キクメイシは直径5mm程の大粒です。

それぞれの色合いから、私は前者のバンドルを「焼たらこ」、後者のバンドルを「梅ミンツ」

と例えています。

キクメイシのバンドルは種類によって色が異なる印象でしたが、粒の大きさとしてはやはり、梅ミンツですね・・・

粒が大きいと、出てくる瞬間がはっきりと分かります。

 

 

 

岩にしがみつきながら必死に撮影しました。

大体産卵が行われるのが大潮の前後なので潮の動きが大きく、若干海の中もうねります。

とはいえ、7/29は大潮から少々ズレたので、純粋にうねりがありました。

いい絵が撮れて満足です。

 

産卵した次の日の朝は、波や潮の向きによってはサンゴのバンドルの匂いで辺りが包まれます。

生臭いような、のり塩チップスのような・・・独特の匂いです。

 

サンゴの産卵は、サンゴ達にとって一年で最も活動する時期と言っても過言ではないと思います。

毎年の水温や海域状況、雨の有無などによっていつ産卵するかは異なります。

タイミング良く産卵を見ることができたらかなりラッキーだと思っています。

今年は特に、大規模産卵に立ち会うことができて良かったです。また来年、記録のためにも潜ろうと思います。

 

byさく太郎

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