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アルゴス放流第2弾のまとめ
2019年5月26日にアルゴス放流第2弾としてアカウミガメの「つばき」にアルゴス送信機を装着して放流しました。
残念ながら、6月24日の受信を最後に「つばき」からの信号は途絶えてしまいました。
約1ヵ月の追跡となりましたが、得られたデータは非常に興味深いものとなりましたのでご紹介します。11/26
アルゴス放流第2弾
第1弾の放流では、当館で繁殖したアカウミガメの子ガメ(2才)を放流し追跡しましたが、
第2弾では、当館で繁殖し成体まで成長した雌のアカウミガメを放流しました。
まず第1弾第2弾共に、水族館で繁殖したウミガメを放流した場合、野生個体の回遊や行動とどのような違いがあるのか?
を調べるのが大きな目的です。
日本近海の成体のアカウミガメは、
野生個体の場合、普段は摂餌海域で暮らしており、産卵の時期になると主に日本の太平洋側沿岸に接近し産卵を行います。
そして、産卵期が終わると再び摂餌海域へと戻ります。
日本のアカウミガメの摂餌海域は、主に東シナ海付近の餌が豊富な浅海域ですが、
一部日本の太平洋側外洋を広く回遊する個体もいるようです。
そして、今回放流したアカウミガメの「つばき」は、1995年に当館で繁殖し23年間飼育し続けてきた個体です。
甲長82㎝、体重105㎏と十分に成長しており、さらに当館の人工産卵場で産卵の経験もある成体の雌です。
この個体を産卵期直前に串本から放流した場合、
野生でも産卵を行うのか?
産卵するのであればどこで産卵するのか?
さらに産卵期後はどこに向かうのか?
を調査するのが目的です。
それでは、「つばき」の移動経路を見てみましょう。
放流(5月26日)から10日後(6月5日)まで
総移動距離は約1200㎞
本州に沿って一目散に東へ進んでいます。
これは前回の「うめ」とそっくりな移動経路です。
黒潮の潮流に乗って、陸地には全く興味が無いかのように高速で移動しています。
産卵のために何処かに上陸したような兆候は見られませんでした。
さらに、そのまま日本から離れて太平洋沖に向かってしまいました。
まるで「うめ」と同様に、太平洋を横断する大回遊のようです。
放流20日後(6月15日)まで
総移動距離は約2260㎞
結局そのまま黒潮の流れに乗って太平洋へと飛び出して行き、産卵のそぶりも見せませんでした。
この移動経路は正に大回遊のようです。
移動速度は、体格による遊泳力の違いからか「うめ」以上です。
放流29日後(6月24日)まで
受信終了となる6月24日までです。
総移動距離は約2450㎞
最後の10日間ほどは、移動距離は大きく落ちて付近をうろうろするようになり、
その後受信が途絶えました。
今回の「つばき」の放流から見られたことは
先ず産卵行動は確認できませんでした。
しかし、実は元々産卵については、あまり大きな期待はしていませんでした。
ウミガメの産卵間隔は個体によって様々ですので、産卵する個体であっても
今回必ず産卵するわけではありませんでした。
ですので、産卵行動は確認出来たらラッキー、といった感じでした。
よって、今回の放流で最も注目したのはどこに向かうかです。
予想としては、日本の太平洋側沿岸を辿って産卵地を物色しつつ西へ向かい
東シナ海方面へ向かうのではないか、と思っていました。
要するに、多くの野生個体と同様の回遊をするのではないかと予想していました。
結果は、全く反対のものでした。
まるで、第1弾の「うめ」の様に大回遊へ行くかのような移動です。
↓ 赤が「うめ」 黄色が「つばき」です
これは、大変興味深い可能性です。
もしかしたら、「つばき」は飼育下で成体まで成長したとしても、
経験していない大回遊のために太平洋横断に向かったのでしょうか。
しかし、今回受信途絶した地点はまだその可能性を確信できる場所ではありませんでした。
野生のアカウミガメの一部には、受信途絶した海域を摂餌域にする個体もいるようなのです。
そのため、「つばき」が今後この海域にとどまったのか、太平洋横断に向かったのかは
大いに注目するところでした。
それだけにこのタイミングでの受信途絶はとても残念でした。
受信が途絶えた原因は不明ですが、
「つばき」の体格からして1ヵ月程度絶食しても餓死することはありません。
送信機の脱落や損傷、もしくはサメに襲われた、等の可能性が高そうですが正確なところは分かりません。
今回は1ヵ月での追跡終了となってしまい非常に残念でしたが、「つばき」の行動はとても興味深い結果でした。
今回の様な放流は、色々とコストが掛かるため中々簡単には行えないのですが、
是非「つばき」のその後を調べるためにも機会があれば次弾の放流に臨みたいと思っています。
つばきの通信が途絶えました
-
▼Platform ID: 66244
名前:つばき
性別:メス(産卵経験あり)
1995年9月生まれ、体重105kg/甲長85cm
※ウミガメ担当スタッフが取得した位置情報を精査した公表データになります。
【2019年6月24日を最後に、つばきの通信が途絶えました】
発信機を付けて太平洋を横断していたアカウミガメの『つばき』ですが、
2019年6月24日(放流から30日目)を最後に通信が途絶えてしまいました。
通信復活が見込めないため、以上をもって第2弾の追跡調査を終了いたします。
【つばきの追跡調査記録】
追跡期間:2019年5月26日~2019年6月24日
追跡日数:30日間
串本からの直線距離:約1800㎞
アルゴス放流第1弾のまとめ
2018年11月25日に発信器を装着して放流した「うめ」と「みかん」
みかんが1ヵ月ほどで通信が途絶えてしまった後も順調に受信を続けていたうめですが、
2019年4月8日を最後にうめの受信も途絶え、アルゴス放流第1弾は終了となりました。
うめの放流後の経過をまとめました。
うめは放流(2018年11月25日)後すぐに南下が確認され、放流2日後には約200㎞移動し、
潮岬沖約170㎞地点の黒潮流域まで到達しました。その後も黒潮の流路に沿って1日100㎞前後で
移動し続け、放流10日後(12月5日)には約1000㎞移動し千葉県銚子沖まで到達しました。
その後も黒潮続流から北太平洋海流の流れに乗って日本から離れ、太平洋横断へと向かいました。
下の画像は、移動経路と潮流の流速を合わせたもので、色が赤くなっている部分が流速が
速い場所です。うめの移動経路は黒潮の流路と概ね一致しており、黒潮の潮流に乗る事で非常に
高速で移動している事がよく分かります。
そのため、
黒潮→黒潮続流→北太平洋海流と進むにつれて流速が弱まり、比例してうめの移動速度も
低下しています。うめの10日毎の移動距離は、放流10日後までに約1000㎞移動していましたが、
放流20日後からは400~700㎞となり、80日以降は200~300㎞と移動距離は低下してします。
また途中何度も南北に蛇行を繰り返していますが、これも迷走しているわけでは無く、
潮流と一致した移動である事は画像を見るとよく分かります。
そして、2019年4月8日(放流134日後)には、
串本から3300㎞近く離れた太平洋上東経172°付近まで到達し、
これまでの総移動距離は約6200㎞となりました。
しかし、4月8日以降信号の受信は途絶え、うめの追跡はここまでとなりました。
最終的にうめは、4か月半の追跡となりました。
当初の希望としては、発信器のバッテリー容量から半年~1年の追跡を考えていたので、やや早い終了となってしまいました。
受信が途絶えてしまった要因として考えられるのは、
①死亡(病死、被食)
②発信器の脱落・故障
でしょうか。
一番可能性が高いのはサメなどによる被食ではないかと思いますが、実際のところは確かめようもありません。
また、発信器の脱落などであればまだ元気に生きている可能性もあり、20年後くらいに日本の砂浜で
産卵しているところを見ることが出来るかもしれません。
今回の放流では、当館で繁殖したアカウミガメの子ガメを放流した場合、野生個体のように大回遊を行うか?
を探るのが一つ大きな目的でした。
結果として、みかんは一か月ほどで受信が途絶えてしまい不明でしたが、
うめは野生でもしっかりと生存し大回遊へと向かいました。
このケースが確認できたことは、当館のウミガメ繁殖と放流において大きな成果であったと言えます。
しかし、うめはまだ2件中の1件でしかありません。
このような試みはもっと多くのサンプルを集めてこそ正確なデータとなりますので、
今後も定期的に行っていければと思っています。
うめの通信が途絶えました
-
▼Platform ID: 66242
名前「うめ」
2016年9月生まれ
-
▼Platform ID: 66243
名前「みかん」
2016年9月生まれ
【2019年4月8日を最後に、うめの通信は途絶えました】
発信機を付けて太平洋を横断していたアカウミガメの『うめ』。
2019年4月8日(134日目)を最後に通信が途絶えてしまいました。
みかん同様、原因は色々考えられますが、実際のところは不明です。
通信復活が見込めないため、以上をもって第1弾の追跡調査を終了いたします。
【うめの追跡調査記録】
追跡期間:2018年11月25日~2019年4月8日
追跡日数:134日間
総移動距離:約6200㎞
串本からの直線距離:約3300㎞
アルゴス放流 1ヵ月のまとめ
2018年11月25日に「うめ」と「みかん」を放流してから1か月が経過しました。
放流からこれまでの推移を振り返ってまとめてみたいと思います。
まず今回放流した2匹は、共に2016年に当館で繁殖したアカウミガメです。
「うめ」発信器番号:66242 放流時:甲長32㎝ 体重5.8㎏
「みかん」発信器番号:66243 放流時:甲長31㎝ 体重5.5㎏
1.放流 2018年11月25日
当日は14時ごろに水族館前の海岸から放流し、
最初の受信はみかんは15時ごろ、うめは18時ごろでした。
放流後、共にすぐに迷い無く沖に向かって泳ぎだしているのがわかります。
取り合えずは順調な滑り出しでした。
2.放流2日後 2018年11月27日
放流から2日経ち、2匹の動きに早くも大きな差が現れました。
うめは一目散に南下し潮岬沖170㎞の地点まで移動していました。
2日間で約200㎞移動しています。
この位置は完全に黒潮の流れに乗っていて、期待通りの経路ですが移動速度は予想以上でした。
一方みかんは、一旦は潮岬沖まで出たにもかかわらず、
Uターンして沿岸に戻って来てしまいました。
3.放流7日後 2018年12月2日
放流から1週間経過し、2匹の差はさらに顕著となりました。
うめはそのまま黒潮の流れに乗り東へ向かい、伊豆半島沿岸へ到達しました。
総移動距離は約730㎞です。
反対にみかんは、すさみ沖10~20㎞の辺りにしばらく留まり、
12月に入ると急遽北上し白浜沿岸へと移動しました。
総移動距離は約150㎞です。
4.放流14日後 2018年12月9日
放流2週間後、うめはそのまま毎日100㎞前後移動し続け、
遂に日本を離れて太平洋を横断し始めました。
これまでの総移動距離は約1400㎞です。
みかんは、白浜から離れ徳島へと向かいました。
徳島県美浜町沿岸に到達しこのまま西側へ抜けていくかと思われましたが、
再び紀伊半島へ戻り沿岸を南下しすさみ沖約20㎞地点へ
総移動距離は約340㎞です。
みかんは、紀伊水道へ入って大阪湾や瀬戸内海へ向かってしまうと問題でしたが、
そこはしっかりと回避しているのを見ると方向が分からず迷っているわけでは
ないのかもしれません。
5.放流24日後 2018年12月19日
うめは、千葉県沖から東へと向かう黒潮続流に乗って順調に東へと向かっています。
黒潮の流れはこのあたりから弱くなっていくためか、
うめの移動速度もこれまでと比べゆっくりとなってきました。
放流後2週間で約1400㎞(約100㎞/日)移動したのが、
その後10日間で約320㎞(約32㎞/日)と1/3程度の速度になりました。
総移動距離は1720㎞となりました。
そして、みかんには大きな問題が生じました。
この日を境に信号の受信が途絶えてしまったのです。
前回以降みかんは南下を続け潮岬南西約60㎞、黒潮手前の地点まで来ましたが、
そこから再び北上し和歌山県日置川沿岸へ移動しました。
その後は、日置大浜沿岸付近、概ね陸地から5㎞以内で4~5日過ごした後、
12月19日夜の受信を最後に信号が途絶えました。
総移動距離は約540㎞でした。
6.放流35日後 2018年12月30日
放流から1か月経過し、うめは現在千葉県銚子沖約1500㎞の太平洋上を東進中です。
総移動距離は約2530㎞となり、放流から1日平均約72㎞で移動していることになります。
7.まとめ
放流直後から非常に対称的な結果となったうめとみかんでした。
日本の野生で生まれたばかりアカウミガメは、黒潮の流れに乗り太平洋を横断して行きます。
その為、今回の放流でもうめの回遊経路を想定しており、みかんの行動はやや予想外でした。
そして、現在うめは順調に太平洋を横断中ですが、
みかんは1か月弱で受信が途絶えてしまいました。
12月20日以降のみかんの受信は無く、みかんの追跡はここまでとなりそうです。
受信が途絶えてしまった理由には様々な事が考えられます。
①死亡(船などとの接触、混獲、被食)
②送信機の脱落
③送信機の故障
などが考えられます。
①死亡の場合、それまでの移動を見るに体調不良等で死亡した線は薄そうです。
どれも可能性がありますが、どの説かを特定することはできません。
②、③であることを祈ります。
うめとみかんは生まれたばかりの子ガメと違い、2才のウミガメですので
十分な遊泳力があり望んだ場所へ移動することができます。
沿岸近くに留まったみかんは、水深が浅く餌が豊富な沿岸に留まることを
選択したのでしょうか。
うめのような大回遊経路を辿らなくても、成長することが出来れば問題はありません。
但し、沿岸には障害も多いため出来れば大回遊へ向かって欲しかったと言うのが本音です。
もちろん今回の信号途絶の原因が沿岸に留まっていたからかどうかは分かりませんので、
現在も元気にしていることを期待しています。
これは現在の海水温と黒潮の流路です。(出典:海上保安庁ホームページ)
二本線の赤い矢印が黒潮の流路です。
これを見ると、黒潮の流れとうめの移動経路がまさしく被っているのがよくわかります。
黒潮のスピードは最大で4ノット(時速7.4㎞)ほどにもなりますので、
黒潮に乗ったうめが毎日100㎞前後移動していたのも頷けます。
また、黒潮は世界有数の暖流なので、うめの現在いる場所の水温も20℃はありますので
凍えることはありません。
残念ながらみかんの追跡はここまでとなってしまいましたが、
うめは順調に太平洋を横断中です。
このままハワイまで行くのか、アメリカ西海岸まで行くのか、どこまで追跡し続けることが
出来るのかは分かりませんが期待して調査していきたいと思います。
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