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アルゴス放流 1ヵ月のまとめ
2018年11月25日に「うめ」と「みかん」を放流してから1か月が経過しました。
放流からこれまでの推移を振り返ってまとめてみたいと思います。
まず今回放流した2匹は、共に2016年に当館で繁殖したアカウミガメです。
「うめ」発信器番号:66242 放流時:甲長32㎝ 体重5.8㎏
「みかん」発信器番号:66243 放流時:甲長31㎝ 体重5.5㎏
1.放流 2018年11月25日
当日は14時ごろに水族館前の海岸から放流し、
最初の受信はみかんは15時ごろ、うめは18時ごろでした。
放流後、共にすぐに迷い無く沖に向かって泳ぎだしているのがわかります。
取り合えずは順調な滑り出しでした。
2.放流2日後 2018年11月27日
放流から2日経ち、2匹の動きに早くも大きな差が現れました。
うめは一目散に南下し潮岬沖170㎞の地点まで移動していました。
2日間で約200㎞移動しています。
この位置は完全に黒潮の流れに乗っていて、期待通りの経路ですが移動速度は予想以上でした。
一方みかんは、一旦は潮岬沖まで出たにもかかわらず、
Uターンして沿岸に戻って来てしまいました。
3.放流7日後 2018年12月2日
放流から1週間経過し、2匹の差はさらに顕著となりました。
うめはそのまま黒潮の流れに乗り東へ向かい、伊豆半島沿岸へ到達しました。
総移動距離は約730㎞です。
反対にみかんは、すさみ沖10~20㎞の辺りにしばらく留まり、
12月に入ると急遽北上し白浜沿岸へと移動しました。
総移動距離は約150㎞です。
4.放流14日後 2018年12月9日
放流2週間後、うめはそのまま毎日100㎞前後移動し続け、
遂に日本を離れて太平洋を横断し始めました。
これまでの総移動距離は約1400㎞です。
みかんは、白浜から離れ徳島へと向かいました。
徳島県美浜町沿岸に到達しこのまま西側へ抜けていくかと思われましたが、
再び紀伊半島へ戻り沿岸を南下しすさみ沖約20㎞地点へ
総移動距離は約340㎞です。
みかんは、紀伊水道へ入って大阪湾や瀬戸内海へ向かってしまうと問題でしたが、
そこはしっかりと回避しているのを見ると方向が分からず迷っているわけでは
ないのかもしれません。
5.放流24日後 2018年12月19日
うめは、千葉県沖から東へと向かう黒潮続流に乗って順調に東へと向かっています。
黒潮の流れはこのあたりから弱くなっていくためか、
うめの移動速度もこれまでと比べゆっくりとなってきました。
放流後2週間で約1400㎞(約100㎞/日)移動したのが、
その後10日間で約320㎞(約32㎞/日)と1/3程度の速度になりました。
総移動距離は1720㎞となりました。
そして、みかんには大きな問題が生じました。
この日を境に信号の受信が途絶えてしまったのです。
前回以降みかんは南下を続け潮岬南西約60㎞、黒潮手前の地点まで来ましたが、
そこから再び北上し和歌山県日置川沿岸へ移動しました。
その後は、日置大浜沿岸付近、概ね陸地から5㎞以内で4~5日過ごした後、
12月19日夜の受信を最後に信号が途絶えました。
総移動距離は約540㎞でした。
6.放流35日後 2018年12月30日
放流から1か月経過し、うめは現在千葉県銚子沖約1500㎞の太平洋上を東進中です。
総移動距離は約2530㎞となり、放流から1日平均約72㎞で移動していることになります。
7.まとめ
放流直後から非常に対称的な結果となったうめとみかんでした。
日本の野生で生まれたばかりアカウミガメは、黒潮の流れに乗り太平洋を横断して行きます。
その為、今回の放流でもうめの回遊経路を想定しており、みかんの行動はやや予想外でした。
そして、現在うめは順調に太平洋を横断中ですが、
みかんは1か月弱で受信が途絶えてしまいました。
12月20日以降のみかんの受信は無く、みかんの追跡はここまでとなりそうです。
受信が途絶えてしまった理由には様々な事が考えられます。
①死亡(船などとの接触、混獲、被食)
②送信機の脱落
③送信機の故障
などが考えられます。
①死亡の場合、それまでの移動を見るに体調不良等で死亡した線は薄そうです。
どれも可能性がありますが、どの説かを特定することはできません。
②、③であることを祈ります。
うめとみかんは生まれたばかりの子ガメと違い、2才のウミガメですので
十分な遊泳力があり望んだ場所へ移動することができます。
沿岸近くに留まったみかんは、水深が浅く餌が豊富な沿岸に留まることを
選択したのでしょうか。
うめのような大回遊経路を辿らなくても、成長することが出来れば問題はありません。
但し、沿岸には障害も多いため出来れば大回遊へ向かって欲しかったと言うのが本音です。
もちろん今回の信号途絶の原因が沿岸に留まっていたからかどうかは分かりませんので、
現在も元気にしていることを期待しています。
これは現在の海水温と黒潮の流路です。(出典:海上保安庁ホームページ)
二本線の赤い矢印が黒潮の流路です。
これを見ると、黒潮の流れとうめの移動経路がまさしく被っているのがよくわかります。
黒潮のスピードは最大で4ノット(時速7.4㎞)ほどにもなりますので、
黒潮に乗ったうめが毎日100㎞前後移動していたのも頷けます。
また、黒潮は世界有数の暖流なので、うめの現在いる場所の水温も20℃はありますので
凍えることはありません。
残念ながらみかんの追跡はここまでとなってしまいましたが、
うめは順調に太平洋を横断中です。
このままハワイまで行くのか、アメリカ西海岸まで行くのか、どこまで追跡し続けることが
出来るのかは分かりませんが期待して調査していきたいと思います。